美コートワークトップ

汚れとキズに強く、ずっと“キレイ”を実現するステンレスワークトップの進化形

 2013年12月9日、クリナップの最上位ステンレスシステムキッチン「S.S.」に、キッチンの常識を大きく変える新ラインナップが生まれた。
 キズがつきにくく、汚れが落ちやすく、「ずっと“キレイ”も夢ではない」を特徴とする「美コートワークトップ」だ。キッチンの「天板」であるワークトップを金タワシでこすっても、目に見えるようなキズがつくことはない。油性マジックで文字を書いても、霧吹きの水を吹き付けるだけで、汚れがきれいに落ちてしまう。主婦の声をもとにして生まれた「美コートワークトップ」開発における、こだわりのストーリーを紹介しよう。

掃除が簡単で、いつもきれいなシステムキッチン

「キズや汚れがつくのが嫌――」
 2012年11月、クリナップは、同社製品を愛用する主婦モニターを招いてグループインタビューを行った。「モニターの皆さんに、自宅のキッチンの写真を撮ってきていただいたのですが、ワークトップに敷物を敷いている人が結構いたのです」と、同社で新商品開発を担当する同社キッチン開発課の吉冨賢治氏は話す。
 ユーザーの声や営業担当者の声をとりまとめ、次の新商品にはどんなものがふさわしいのかを検討し、商品開発に反映させ、世に送り出すことが吉冨氏の仕事。同グループインタビューで吉冨氏は、ユーザーがワークトップにキズがつくのを非常に気にしていることを、改めて実感したという。また吉冨氏はアンケート調査などで寄せられる「油汚れなどの掃除が大変」といったユーザーの声を、商品開発に反映できないかと模索していた。

美コートワークトップの商品企画をした
クリナップ開発本部 開発部 キッチン開発課の吉冨賢治氏


「美コートワークトップ」を装備したステンレスシステムキッチン「S.S.ライトパッケージ」

「美コートワークトップ」の特徴は、SUS304ステンレス鋼の表面に微細なドーム状の突起を無数に設けた「特殊エンボス加工」と、「美コート」コーティングにある。
 従来の平らなワークトップとは異なり、「美コートワークトップ」は食器やキッチン用品が「点」で接するので、表面にキズがつきにくい。また「美コート」は、水が浸透しやすい親水性のセラミックス系特殊コーティング。「美コート」を通じて、水分が汚れの下に回り込み、油汚れなどを浮かせるので、ふきんでサッと一拭きしただけで、油汚れも簡単に落ちてしまう。
掃除が簡単で、いつもきれいなワークトップという、ステンレス製システムキッチンの新たなスタイルを築いた「美コートワークトップ」は、「S.S.」の「B-Style I型ステンレスワークトップ」に対応している。

 ちなみに特殊エンボス加工と「美コート」はすでに、クリナップが2006年に発売し、2013年10月に「第5回ものづくり日本大賞」で東北経済産業局 長賞を受賞した「美・サイレントシンク」に採用されている。先のグループインタビューでも、「美・サイレントシンク」の掃除のしやすさと、キズの目立ちにくさに対する主婦モニターの評価は、非常に高かった。
 そこで「『美コート』がワークトップにもあったらどう思いますか?」と提案したところ、「商品化されれば使ってみたい」という声が大きく、2012年11月に「美コートワークトップ」の商品化に向けた研究開発がスタートしたという。

 ところが開発にあたり、苦労も少なくなかった。スペースが限られるシンクとは異なり、広い面積のワークトップ全体にエンボス加工と「美コート」を均一に施すにはどうしたらいいのか。また、シンクは水を流して掃除ができるが、ワークトップでは拭き掃除が中心。拭き掃除だけで本当に、油汚れが一拭きで落ちるのかについても、当初は疑問の声があった。
「そういう部分について、クリナップ研究所をはじめ、技術陣、工場などの各部門から多くの方に参画していただき、商品として仕上げることができたのです」と吉冨氏は当時を振り返る。

「試作―実験―評価―改善」の積み重ね


「美コートワークトップ」開発にあたり、試作品の評価作業を担当したクリナップ研究所 研究1グループの中野風希(ふき)氏

福島県いわき市四ツ倉町にあるクリナップ研究所では、「美サイレントシンク」で培った技術をベースに、「親水性の高いワークトップ」の開発を進めた。「キッチンにある水を利用し、簡単に掃除ができるワークトップを作るにはどうしたらいいのか」が、主な研究テーマである。
 濡れたふきんに含まれる程度の少ない水で、油汚れをひと拭きでサッと落とすためには、どんなコーティングが最適か。加えて、金属製や陶器製などの硬い道具が直接表面に触れるワークトップで、キズをつきにくくするためには、どんな形のエンボス加工やコーティングが適当なのか。あるいはエンボス加工や「美コート」を、広い面積にわたって均一に施すためにはどんな製造技術が必要かに至るまで、製造部門などを交えて何度も検討が繰り返された。
 こうしたなかで、さらにキズがつきにくくなった硬質セラミックス系コーティングをワークトップにまで施し、「美コート」がさらに進化していったのである。
 一般に、研究開発の現場では、「製品にこうした性能を持たせたい」という目標を決めて試作品を作り、試験を行う。その結果を踏まえて、試作品が目標に対してどの程度の性能を実現しているのかを評価する。そして、試作品の性能をさらに高めるための課題を見つけて解決方法を探し出し、それを反映させ、次の試作につないでいくのだ。
 研究開発の現場では、こうしたサイクルを何度も繰り返し、目標をクリアする製品を作り上げていく。
 この一連の作業の中で、試作品の評価作業を担当したのが、クリナップ研究所 研究1グループの中野風希(ふき)氏だ。

 研究開発の現場では、ひとくちに評価といっても、手間のかかる作業が多い。たとえば摩耗試験では、実際の台所作業に近い条件を設定し、試験装置で「美サイレントシンク」の試験体の表面をスポンジでこする作業を何千回、何万回と繰り返す。機械だけに頼らず、自分の手で感触を確かめながら、試験体を擦る作業を行うことも少なくない。
 「カウンターで数えながらやることもありますが、私の場合は自分で一定のリズムを作り、2分半で500回のペースで試験体を擦っています」と中野氏。スポンジだけでなく、金タワシで試験体の表面をこすったり、ときには高いところから土鍋を落としたりして、ワークトップ表面の状態を調べたこともあった。
 その一方で、中野氏を始めとする研究スタッフは、研究室だけの作業で開発を完結させず、各部署との密なコミュニケーションを取ることを心がけた。
 「たとえば『こういう試験をしたいので、こういう試験体を作って下さい』と製造部門に直接出向いてお願いしました。その結果をフィードバックしなければ、次につながらないので、試験結果をきちんと伝えて『次の試験体を作って下さい』と依頼したのです」
 研究開発の現場でとくに苦労したのは「見た目」、すなわちステンレス特有の美観を保ちながら、キズのつきにくさと汚れ落ちの良さを両立させること。製造部門とコーティング開発部門などとの数多くのやり取りの中で、問題は徐々に解決していった。


手作りの試験装置で「美コートワークトップ」の試験体の表面をこすり、摩耗試験を行う


機械だけに頼らず、手作業でも摩耗試験を実施。2分半に500回のペースで試験体をひたすらこする作業を続ける


摩耗試験後に、試験体表面の摩耗の状態を電子顕微鏡などで確認し、試験結果を評価する

「誰のためにキッチンを作るのか」という原点を忘れない

 「美コートワークトップ」の発売にあたり、クリナップでは、従来の平らなワークトップとのキズのつき具合や、汚れ落ちの具合を比較できるデモプレートを拡販用に用意した。「ショールームや展示会で、油汚れや油性マジックの文字などが、一回の水拭きで落ちることを体験していただいた来訪者の皆さんから、驚きの声が上がっています」吉冨氏は話す。
 中野氏も「ショールームの担当者からも、『掃除がしやすい、きれいなワークトップなので、お客様の目を引いています』という評判を聞いています」と微笑む。
「ずっと“キレイ”も夢ではない」――。
 長く使い続ける中で、水拭きだけで新品のような状態が続くというのが、「美コートワークトップ」の最大のアピールポイントだ。
 「お客様が、キッチンにどんな機能を望んでいらっしゃるのかをまず考えることが大事です。私たちがキッチンを作っているのは誰のためなのか、それはお客様のためなのだ、ということを忘れず、お客様の求める姿に(キッチンを)少しでも近づけたい。そのためには、妥協は一切許されません」と、中野氏は抱負を語る。

記事:加賀谷 貢樹
掲載:こだわり物語
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