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第18回 「地球から消えゆく湖」〜20世紀最大の環境破壊〜
アラル海の元湖底を走っていると水分を含んだ柔らかい地面に足を取られ、バックしているところ。
アラル海の元湖底を走っていると水分を含んだ柔らかい地面に足を取られ、バックしているところ。

現在、世界中で大きな湖が干え上がりはじめている。いったい何が起きているのか今回の旅の中で実際に2つの大きな湖を訪ねてきた報告をしたい。1つはアメリカの「ソルトンシー」、2つ目は中央アジアに位置する大きな湖「アラル海」だ。なかでも世界で4番目に大きいとされるアラル海の状態は信じられないものだった。

バイオディーゼル燃料で動く僕らの車、バスコファイブは、一度満タンにすると化石燃料に頼る必要がないためガソリンスタンドのない砂漠地帯を4,000km以上も走ることができるように作られている。また砂漠のような道無き道を走る事ができる4輪駆動車だから通常の車では行けない様な地形でも走ることができる。その利点を活かして衛星写真をもとにアラル海の元湖底をGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を頼りにその砂漠化した様子を調べたり、砂漠に残された船を探索してきた。

中央アジアにあるカザフスタンとウズベキスタンにまたがるアラル海は1960年までは琵琶湖の1,000倍、世界で4番目に大きな湖で漁業が栄えていた。しかし、ソ連時代、ウズベキスタンを中心とする綿花の栽培に、アラル海に流れるアムダリヤ、シルダリヤ川の水が灌漑に大量に利用されるようになり、アラル海が干上がり始めた。1960年から94年の34年間で37メートルも水位が下がった。1988年には湖水が2つに分かれ、面積も91年には2つの湖水を合わせても以前の約半分にしかならなかった。このままいけば、21世紀の前半にはアラル海は消滅するとも言われている。また綿花生産に使われた化学肥料や農薬、湖底の塩などが、湖水が干上がったために飛散し、人々や家畜の健康を害しているのが現状だった。

一夜にして水が引いてしまったため逃げ遅れた客船の残骸が砂漠の中に浮かんでいた。
一夜にして水が引いてしまったため逃げ遅れた客船の残骸が砂漠の中に浮かんでいた。
これぞ持続可能な燃料「ラクダの糞」を使って焚き火を起こしてみるとよく燃えてくれた。
これぞ持続可能な燃料「ラクダの糞」を使って焚き火を起こしてみるとよく燃えてくれた。

干え上がった湖底を走っていると砂漠の真ん中に大きな客船2隻が見えて来た。茶色くさびて朽ち果てた姿は砂漠には似つかわしくない異様な光景だった。さらに突き進むと今度は漁船が点々と現れてきた。その夜、一隻の漁船の横でテントを張り、一夜を過ごすことにした。アラル海の特産キャビアが食べられないのがちょっと残念だが、ご馳走は描くだけにして、旅でラグメンは食べれなかったが、ラクダの糞を燃料に焚き火をおこしてその夜は夕食にラーメンを作り、お茶を沸かした。乾燥した糞はいい燃料になる。捨てるものを再生して使うバイオディーゼル燃料と同じく糞もエコ燃料というわけだ。夜空は眩しいくらいの満点の星が輝いていた。夜になると漁船のシルエットだけが月に照らされて浮かび上がった。夜だと湖に水があり、その上に浮かぶ船の事を容易に思い浮かべる事ができた。海のように広いこの湖に沢山の漁船で賑わっていたころのことを・・。後で話を聞くとこの客船があった場所は、停泊していた漁港の水位がさがったため、水深が深いこの場所に移動させていたのだが、ある日一夜にして水位が下がり、取り残されてしまったのだという。近年、人工衛星からみてわかる地球の大きな変化がこの湖の衰退だという。信じられない事に北海道もある広さの湖が無くなろうとしているのだ。複雑な思いである。

水深約30メーターはあっただろう湖底に泊まった翌朝の食事はウエハースとコーヒー。
水深約30メーターはあっただろう湖底に泊まった翌朝の食事はウエハースとコーヒー。

ソルトンシーも同じように灌漑により水位が下がり同じ状況をたどっている。これらの湖を現実に見て思う事は、目先の利益に囚われ人工的な自然体系の介入によって、地球自体のバランスがくずれ、取り返しがつかなくなってしまった未来の地球を見せられているように思えてならなかった。アメリカ先住民の考え方の一つに、「母なる大地は、自分たちの物ではなく、子孫から譲り受けているもので、それを良い状態で子孫にもどすようにしなければならない」というものがある。自然を貸してもらっているんだと言う謙虚な気持ちで、長期計画を建てて利用していかないと、結局は自分や自分の子孫に跳ね返ってくることになるのだろう。

 
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)については、第3回「砂は命を生かす」で説明があります。

(続く)

ラグメンとは

日本のうどんほどの太さのコシのある手打ち麺に、羊肉などの肉とたっぷり野菜を炒めたもの。中央アジア・オアシス定住民の代表的料理。

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