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第27回 「母なる海はリラックスの源」

 

日々暮らしているとどうしてもストレスに振り回されてしまうことも多い。しかし、より健康的で気持ちよく生きていきたいと誰もが願うものだ。でもどうしたらいいのか? その最大のカギは「リラックスすること」ではないかと思う。

「リラックスすること」これは日常生活だけでなく、生きることすべてに大切なことに違いない。最近、ある競技との出会いを通して、その事を強く感じた。
その競技とは「フリーダイビング(※)」だ。「たったひと息でどこまで海を深く潜れるのか?」を競うもので、世界のトップクラスにもなると水深100m以上にも達する。
想像してほしい。たったひと息で水深100m潜る(!)ということを。往復200mを泳ぐ間に息をこらえる時間は、なんと3〜4分。その上、水深100mでは11気圧にもなるので肺がにぎりこぶしほどの大きさにまでつぶれてしまう過酷な世界なのだ。

 

いったい彼らはどうやってそんなに深く潜ることができるのだろう。じつはその大切な要素のひとつが「リラックスすること」なのだ。
それはこういうことだ。海に恐怖を感じたり、深く潜ろうとして心身が緊張してしまうと、酸素を無駄に使ってしまい、深くは潜れない。ストレスや緊張を受けて呼吸が速くなり、身体の機能を有効に使えなくなる。つまり本来人が持っている機能を最大限に使うということは、リラックスしているときにこそ可能となるのだ。だからこそ、フリーダイバーたちは精神状態や潜水時間と大きく関係する「呼吸」に強い意識を向けているのだ。

例えば、僕らの”日常生活”というものを”海を潜ること”に置き換えてみよう。普段は意識していなかった呼吸に、意識を向けてみる。そうすることで、自分の精神状態が客観的にわかったりする。気付かなかったストレスに気付くこともあるだろう。そうやってフリーダイバーたちが潜る時のように、自分の心や身体の状態に耳を澄ませていくと、自然と気持ちはいい方向へと向かっていく。余計な雑念にとらわれることなく、自分自身に向き合って、リラックスして日常を潜れたら(過ごせたら)、どんなに素敵なことだろうか。

 

また、僕らがリラックスすることと「水」は、実は大きく関係している。
あるフリーダイバーが、僕にこう教えてくれた。「海の中は本当に気持ちがいい。でもね、それを感じるために深く潜る必要は決してないんだ。水面に浮かんでいるだけでもいい。そう、誰でも感じることができるんだ……」
何も海に深く潜らなくたっていい。例えばお風呂に浸かれば肩の力が抜けてホッとするし、水を飲んだり、海や滝に触れたり、水のそばにいる事で気持ちが癒される経験を、誰もが持っていると思う。

その理由は、ヒトと水との関わりにあるのではないかと思う。僕らは生まれてくる直前まで母親の羊水の中で育つ。もっと遡れば、海は生命の起源である。人間には生命維持のために水が欠かせないだけでなく、そういった太古からの記憶が刻まれているのかもしれない。どこかで水を求め、水に触れることで癒され、大切な何かを得ているのではないだろうか。

「いかにリラックスして、今という日常を生きるか」、そして「水中を意識しながら日常を生活することが、気持ちよく生きるヒントになる」ことを、海に潜るフリーダイバーたちが気付かせてくれた。自分の身体の中にある水や、身の周りにある水に気づいて意識を向けてみる。台所の蛇口をひねればジャーと当たり前のように出る、たったコップ一杯の水が、なんだかとても愛おしく思えてくる。
さてと、まずは仕事を忘れて……あったかいお風呂にでものんびり浸かろうかな。

フリーダイビングとは

空気タンクは一切使用せず、海やプールで呼吸をとめて行う閉息潜水の競技。「アプネア」とも言われる。海で行う垂直方向の深度を競う競技(コンスタント競技)、プールで水平方向の距離を競う競技(ダイナミック競技)、プールで息こらえの時間を競う競技(スタティック競技)などがあり、フィンの有無なども含め計8種目にわかれる。(本文中に記述されているのは、フィンを付けて海で深度を競う「コンスタント・ウィズ・フィン競技」である)。
映画「グラン・ブルー」でも描かれた競技で、近年日本人選手が男女ともにアジア記録を更新。世界ランク8位以内に入るなど世界を舞台に活躍している。

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