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第28回 「自然農と大地のエネルギー ?生かし合うこと?」

 

僕は廃油だけを車の燃料にして地球一周を終え、現在は日本一周をしている。そうして現在に至るまで、廃油だけで約10万キロを走り続けている。この旅で多くの人々の生き方や工夫に触れるうち、燃料だけでなく生活にかかる様々なエネルギーを自給したいと考えるようになってきた。家の電気やガスといった普段使うエネルギーを自給自足できれば、暮らしにかかる生活費を節約できるし、限りある資源の節約にもつながる。家の前にある畑から、今日必要なだけの野菜や作物を収穫して料理できれば、農薬を使っていないので安全安心だし、新鮮な野菜の美味しさも格別だ。また、自分で育てて自然と触れ合うことで、 ”命を頂いている” という感謝の気持ちも生まれてくるものだ。
そんなことを考えながら旅をしていると、実に様々な方法で自給自足や自然農に取り組む農家さんに出会う。彼らを訪ねるたび、お天道さまの恵みと大地のエネルギー、自然の声に耳を傾けることのおもしろさを学ぶのだった。

 

「人間はトラクターで土の表面30cmくらいしか耕せないけど、5m高さのある木は、根っこも5m張っていると言われます。人間の力の及ばないところに、自分たちで根っこをだして、こうやって土を改善してくれているんです……」
岩手県で自然農法を営むTさんは、ネムの木に優しく触れながら言った。
そのネムの木は畑の中にある。その根が土をよくしてくれることを彼は知っていて、決して切ることはしない。「ここに役割をもって生えてきてくれている。昔の農家の人達はそういうことをよく理解していた。植物がいちばんよく仕事をしてくれる場所に植えて、畑全体のイメージをしっかりとらえて、恵をうけていたんです」と。
以前、彼の畑の土は農業に適したものではなかったという。元々あった山肌の痩せた赤土を、何年もかけて植物を循環させて改善したものだ。「人間の身体も同じだけど、化学肥料や有機肥料をたくさんあげれば土が元気になるかというと、そうではない。僕が自然栽培の中で考えているのは、土の状況が整っているかどうか。土本来の力を高めるために、肥料を使わずに、植物の力だけで整えてきれいにしていく。そのほうがおもしろいなって思うんです」

早く元気に育ってほしいからといって肥料を与えるのではなく、土が持っているエネルギーを生かしてあげる。それには自然の時間軸を理解して、その変化を根気よく読みとらなければならない。こうした方法では大量生産は難しいだろうが、家族や地域単位でそれぞれが必要な分だけ食物を作るならそんなに量は必要ない。大きなインパクトを自然に与えることもなくなるはずだ。
Tさんが片手ずつ土をとって見せてくれた。肥料を与えずに彼が作った黒い土と、元々あった赤土。よく見ると粘度がまったく違う。黒い土は空気をよく含んでふっくらしているようだった。「もっとふかふかにしてあげたい」そう言って彼は丹精こめて作った黒い土を子供をみるように優しくほぐした。その土には何億もの微生物が活発に生きていて、外から肥料を加えなくてもじゅうぶん植物は育ってくれる。

 

本来もっている力を生かすこと。それは種についても同じだ。植物学者の野澤重雄さんは、バイオテクノロジーも特殊肥料も一切使わず、たった一粒の普通のトマトの種から、一万三千個も実を付けることを実証した。彼は言う。「種に良し悪しはない。大事なことは、まだ小さい苗の時に、自分はどんどん生長しても必要なものは充分与えられるんだという安心感があること。そうすれば苗は世界を信じ、疑うことなくどこまでも伸びていく。 そのような考えで植物が本来持つ潜在能力、生命力の大きさ、深さ、豊かさを引き出しただけである。トマトは心を持っている。私は、そのトマトの心にたずね、トマトに教わりながら、成長の手助けをしただけなんです」と。

大地のもつエネルギーや植物の生命エネルギーを最大限に引き出して生かす。これこそが、自然とヒトが共存共栄できる道ではないだろうか。そして僕らが結果だけに執着するのではなく、その手間や過程を楽しみ味わうこと。大地に育つものを応援し、関わり、育てることこそが、互いを成長させてくれるのだろう。……これって、人間同士の関わりにも言えることかもしれない。 生命あるものが互いに生かし合うこと。その真理は、どの世界も同じなんだな。

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