Home > 山田周生のグローバル・ジャーニー > 第31回
山田周生のグローバル・ジャーニー
山田周生のグローバル・ジャーニーTOP
山田周生のグローバル・ジャーニー

前回のページへBACK

次回のページへNEXT
第31回 「自然と共生するエネルギー 〜支援活動でBDF発電〜」

 

3.11以降、BDFで被災地を走った距離はすでに5万キロを越えた。今回はそうして活動する支援のひとつ「自然・再生エネルギープロジェクト」で行った「BDF発電」についてお話したい。

僕らは「楽器を被災地へ贈るプロジェクト」として被災したミュージシャンへ楽器を届けるプロジェクトも行っている。楽器が順調に届き始め夏も過ぎた頃、彼らから「今までたくさんの支援を頂いてきた。楽器を使って、お礼の気持ちを込めてコンサートをしたい」と、支援に頼らない地元発の音楽イベント企画の声があがるようになった。外からの支援の上に立つイベントではなく、被災した人々自ら立ち上がり、力を合わせて実現していこうというコンサート。

 

そこには、彼らの様々な熱い想いがあった。「震災直後はいったい元通りになるまで何年かかるのか、もう地元は終わりだと思うほどだった」と語っていた彼らだが、春そして夏が過ぎると、街では瓦礫が徐々に片付いていき、一件また一件と店に灯りがともり始めた。まだまだ大変な状況ではあるものの、少しづつ人や街にも変化が見られていた。そんな中、支援への感謝と地元の自分たちが音を出して地域を元気づけることができたなら、と願う彼らの気持ち。そんな想いに僕は感動し、できることをお手伝いする後方支援をしたいと思った。

そこでひとつ、提案したのが”BDF発電”だ。イベントにはマイクやスピーカーなど音響に使う電源が不可欠。そこでその電力にBDFを使ってはどうかということ。ここ被災地だからこそ化石燃料に頼らないエネルギーを使ってエコ燃料を身近に感じてほしいと思い、彼らにBDF発電を提案したところ、彼らも同じ想いだった。「今だからこそ、音を、地球にやさしい燃料で届けたい」と言ってくれたのだ。そうして僕らは今までのノウハウやネットワークを活かして、大型のBDF発電機とBDFを用意。2つあるステージのうち、ひとつのステージをBDF発電でまかなうことになった。

 

イベントは名付けて「釜石・大槌 みんなに贈る音魂 ありがとうコンサート」。被災したミュージシャンが実行委員会となり、忙しい生活再建の傍らでコツコツ進めてきた。じゅうぶんな予算もなかった。道具や設営は自分たちの得意分野を活かして収集。足りないものは今あるものをとにかく利用した。設営から看板まですべてハンドメイドのイベント。「時間もお金も余裕がないから、やれることしかできない。でも今までも地元でライブを運営してきたじゃないか!今こそお礼の気持ちを皆さんに届けよう」と、心ひとつで進めてきた。

そんな皆の想いが天に届いたのか、当日はすばらしい秋晴れに恵まれた。2つのステージでミュージシャンが交互に演奏していく。演奏するのは高校生から70代まで、ロックからフォーク、手話と音楽のコラボなど、年齢もジャンルもじつに多様な音楽が奏でられた。集った地元の人々も本当に楽しそうで、青空の下、音にのり、時には涙を流して1日を過ごした。

 

BDF発電機も、何の問題もなくステージの電力を無事に作り出してくれた。発電機が置かれているのはステージから約15mしか離れていない場所。こんなに近くてうるさくないの!? と思うところだが、防音処理がされているため、なんと1mまで近づいても音がほとんど聞こえない。
排気口から出る排気ガスもほとんど無色透明で皆さんこれまたビックリ。「こんなに静かなんだね」「排ガスって臭いと思っていたけど、これはいい匂いがするよ!」と通りかかる人々も興味津々で感心していた。

このBDF発電。ディーゼル発電機とBDFさえあれば、電気が停電した時でも、天候昼夜問わずどこでも電気を生み出すことができる。そしてBDFは車の燃料にもなる。僕がこのBDFで震災直後から機動力を確保できたように、まさに緊急時に大いに役立てられる発電システムなのだ。もちろんこのBDFはあくまでもひとつの方法にすぎない。大切なのはその土地がもつ環境や気候、そこで人々が育くんできたものを活かして、様々なエネルギーシステムを複合的にバランスよく組み合わせること。その根幹では、人と人をつなぎ、文化を継承するための脇役として上手に利用していくことが欠かせない。今後も「自然・再生エネルギープロジェクト」は続いていく。

BACK 山田周生のグローバル・ジャーニーTOP NEXT
page top