食は人と人をつなげてくれる。食を生み出す鉄器とキッチンでみんなを笑顔にしていきたい。

2011年の震災後しばらくたってから、津波で家を流された方々から、「家の跡地で見つけた鍋や鉄瓶を修理してほしい」と連絡があったんです。当時、私たちの工場も大きな被害をこうむっていましたし、お客様も避難所にいらっしゃるので、新品と取り替ることをお勧めしたのですが、「どうしてもこれじゃないと」と待ってくださいました。もしこれが量産品の鍋だったら、こんなふうに直しても使いたいという気持ちにはならないんじゃないかと。立ち止まっていないで、これからもこんなふうに愛着を持ってもらえる本物を作り続けていこう、と決意を新たにしました。
お客様がその使い込んだ鉄器を大切に思う理由は、もう一つあると思うんです。それは、鉄器のなかでも特に鍋は、食事を作るための道具。食は命の源であり、暮らしの真ん中にあるものです。毎日のごはんを作っていくうちに、その道具である鉄器や、調理する場所であるキッチンに愛着がわいていくのではないでしょうか。つまり鍋やキッチンは、あたたかなおいしい暮らしの象徴だったからだと思うのです。
食にはみんなをつなげるという力もありますよね。震災以降、放射能の問題などもあり、岩手の農業に携わっている人々はとても大変。そこで地元のシェフと私どもで、安全性をアピールするようなイベントを企画したり、シェフと共同で商品開発をしたりしています。こんな時代だからこそ、「家のキッチンで作ったものを家族みんなで、感謝しながら食べるっていいよね!」ということを意識していかないと。そのための道具を作る企業として、いっそう精進していきたいです。

主婦だけでなく家族みんながキッチンに立つ時代だから いつか キッチンの高さもオートムーブに!

実はわが家でもクリナップのステンレスキッチンを使っているんです。私が子どものころから、かれこれ40年以上使い続けています。もちろんこのキッチンで鉄瓶や鉄鍋を毎日使っていますから、一般のご家庭よりはるかに過酷に使われているはず。でも、さすがクリナップさんのステンレスキッチン、今でもまったく問題ありません。S.S.はそんなクリナップのフラッグシップモデルですから、ショールームですみずみまで拝見して、収納力のすごさや、自動で掃除するレンジフードなど、実感を込めて素晴らしいと思いましたよ。職人の技術に立脚した企業姿勢や、高品質を実現できているところなども、うらやましいくらいです。あえて、一つだけ夢のような改良点をS.S.にお願いするのなら……。わが家は共働きなので、キッチンには母や夫など私以外の人が立つ機会も多いんです。だから人によってちょうどいい高さが違う。現代は、そういう家庭も多いのではないでしょうか。もはや、キッチンはお母さんだけのものではなく、家族みんなのもの。だから理想は、キッチンに立つ人に合わせて高さが変えられるといいなあって。オートムーブシステムみたいに、ボタン一つでワークトップも上下するとか……。夢みたいですね(笑)。

鉄器 及源(おいげん)

江戸時代末期に創業して以来160年間、鉄と職人の技術にこだわって日用品を作り続けてきた、南部鉄器の老舗メーカー。大ヒット商品「タミさんのパン焼器」を始めとした数々の人気商品があり、「Gマーク グッドデザイン賞」も多数受賞。新しい技術開発にも積極的で、現在は特に酸化皮膜を利用した「上等鍋」シリーズが、国内だけでなく海外でも注目を集めている。今回お話をうかがったのは、5代目として会社を先導している代表取締役の及川久仁子さん。
http://oigen.jp/

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