そこでそのBDFを車に入れて本当に走れるのか実際に試してみることにした。もしそれが可能なら使い古しの天ぷら油があればガソリンスタンドがなくとも地球上を自由に走ることができるというわけだ。日本の一般家庭から廃棄される天ぷら油は年間20~30万トンにもなるといわれている。世界で消費されている量は計り知れない。調理に揚げ物が多いインドネシアでも問題となっているという。キッチンで使われる天ぷら油は使用後産業廃棄物となり、自然界に捨てると環境汚染になるが、それを車の燃料に使えば完全にエネルギーをリサイクルができるのだから一石二鳥ということになる。しかしまだ誰もその燃料で長い距離をひたすら走った人はいないらしい。それなら自分でやってみようと「二酸化炭素を増やす化石燃料を使わずに、未来も持続して使える燃料を用いて地球を一周する」というバイオディーゼルチャレンジ・プロジェクトが始まった。 |
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計画はまずバイオディーゼル・チャレンジ号(ランドクルーザー 100 )に BDF を入れて日本縦断走行テストを行う。問題がなければヨーロッパでのテスト走行と BDF 事情を調べ、世界一周のルートを検討し独自の設計で BDF 製造装置(プラント)を制作してそれを車に取り付け走行してみる。それが完成すれば地球一周の旅に出ようというものだ。
日本縦断走行テストは北海道の最北端である宗谷岬を 7 月 26 日にスタートして、道央の帯広を通過し、函館から津軽海峡をフェリーで渡る。そして、東北から関東へ抜け本州を縦断。下関から関門橋を渡って九州へ、最後に鹿児島の最南端、佐多岬を目指すという計画のとおり、9日間で約 4000km を走りきった。 |
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肝心の燃料補給は行く先々でBDFを独自に製造する企業や個人経営の牧場、高等学校、廃油回収業者などに協力をお願いした。なかでも地域と密着してBDFをうまく活用していると関心したのは山口県下関市にある長府商店街だ。この商店街では廃油を持ち寄った方に対し1Lにつき5ポイントの商店街ポイント又は現金5円と交換するというシステムで「環境にいい取り組みを通して商店街と住民の交流を活性化させたい」という画期的なアイディアを取り入れたものだった。実際一月あたり1000Lほどの廃食油が集まるそうだ。また滋賀県でBDFを販売するガソリンスタンドの油藤商事ではお客さんが給油に来たときに廃油や空き缶やペットボトルなど資源ゴミを回収するエコステーションとして地域社会に貢献し、かつエネルギーを有効利用していこうという試みをされていたことだ。また、ある地域では主婦が主体となる自治体が資源ゴミや廃油を回収するという仕組みを作り、各家庭から回収された廃食油でBDFを作り有効利用していた。一つ一つは小さな動きだが各人が環境に意識を持ってまずはキッチンからのエコロジーを考えていこうとする努力はすでに始まっている。 |
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この縦断を通してBDFに情熱を傾けられている多くの方にお会いし、環境やエネルギーの使い方、新しい発想があることを学んだ。きっと世界を回るとさらにいろいろなアイディアやライフスタイルを持った人達に出会うことだろう。自宅で廃天ぷら油でBDFを作ることは思った以上に簡単だ。もし、多くのドライバーがBDFを使用すれば二酸化炭素の削減につながり地球温暖化にストップをかけられるかもしれない。もちろんBDFだけが問題の解決になるわけではないが一人一人が地球環境を意識し、自分のできることからなにかを始めることが最も大事なことなのだろう。これからの BDF の旅に乞うご期待。 |