クラフツマンワークトップ

選ばれたクラフツマンが、最上を求めるユーザーのために作る最高級システムキッチン

「ザ・キッチンカンパニー」を掲げるクリナップのフラッグシップモデルである最高級ステンレスシステムキッチン「S.S.」――。
 その最上位モデルが、社内トップレベルの選び抜かれたクラフツマン(職人)たちの手から生み出される「クラフツマンワークトップ」だ。
 ワークトップとは「天板」の意味。業務用キッチンを上回る板厚1.2mmのステンレス材SUS304を採用し、非常に耐久性に優れている。美しいヘアライン(髪の毛ほどの細長い筋目)に彩られたステンレス特有の美観を有する一方で、「常に腰に負担の少ない姿勢を保てるシンク」など、同社が考えるキッチンの理想形を体現した逸品である。


「クラフツマンワークトップ」

ワンランク上のこだわりを持つユーザーに向けて実用性とデザインを追求


「料理を本格的にやりたい。それを通じて家族がみんな健康であり、幸せでありたい」というユーザーの思いを叶えたかったと語る浜田義明氏(商品企画・デザインを担当)

 「開発の者から製造の者、営業の者まで、みんなが誇りを持ってお客様にご提案できる、という思いで作りました」「S.S.クラフツマンワークトップ」の商品企画・デザインを担当した浜田義明氏(現・管理・開発課 開発担当課長)が語る。
 1998年、業界初のオールスライド収納ステンキャビシステムキッチンとして華々しく登場した「S.S.」は、99年「グッドデザイン商品」に選定されるなどの高い評価を市場から受けている。だが浜田氏は「さらにその先に、もっと魅力ある商品ができるのではないか」と考えていた。その思いが実を結び、「S.S.クラフツマンワークトップ」が発売されたのが、2000年のことである。
「こういうものがほしい、という顕在化したニーズだけでなく、その先にあるワンランク上のニーズ。すなわち、お客様がこうありたい、こうなりたいという潜在的なニーズを叶える」(浜田氏)ことを、同社は商品開発の基本に据えた。
「ワンランク上のニーズ」とは、「料理を本格的にやりたい。それを通じて家族がみんな健康であり、幸せでありたい」という、キッチンのハイエンドユーザーたちの思いである。


1999年に描かれたデザイン画。シンク開口部が前面にせり出す、「S.S.クラフツマンワークトップ」の独特の形状も見て取れる

「S.S.クラフツマンワークトップ」のコンセプトは「見て楽しむだけのキッチンではなく、料理にこだわりを持つ方にガンガン使っていただけるキッチン」(浜田氏)。
 調理台のスペースが広く、ステンレス板の厚みもある。お頭がついたままの大きな魚や泥のついた野菜が相手でも気兼ねなく使え、ちょっとやそっと体重をかけてもびくともしない。そんなタフさが同製品にはある。
 だが、さまざまな人が使うキッチンは、ともすれば最大公約数的な製品になりやすい。そんな市場の傾向がある中で、「ハイエンドユーザー層にターゲットを絞った商品がはたして売れるのか」、という意見も社内にはあった。生産部門でも、商品開発サイドが練り上げた商品コンセプトやデザインを見て、「こういうものができるのか」と疑心暗鬼を抱く人も、当初はいたようである。しかし商品開発サイドが提示したデザインが、「工場が持っている技術が非常に活かされるもの」だったことに加え、商品開発担当者も現場に出て、試作を一緒に進める中で、「自社が持っている技術、ノウハウ、ソフトを結集して、業界ナンバーワンの商品を作り上げよう」という気運が盛り上がっていった。

斬新なデザイン・機能を実現する手作りの技

 当時、試作を手がけたのは、クリナップ100%出資の子会社である調理機工業(福島県いわき市/東日本大震災で被災)である。同社久ノ浜工場の工場長を勤めていた山田雅二氏(現・クリナップ岡山工業社長)は、「(久ノ浜工場は)当時、手作業による板金作業の技術が残っていた唯一の工場です。難しい仕事でしたが、(この試作に)工場の技術を活かしたいという思いがありました」と語る。
 現在、「S.S.クラフツマンワークトップ」の生産はクリナップの湯本工場(同いわき市)で行われているが、商品開発サイドが提示した、従来のキッチンの常識を覆す斬新なデザインは、生産部門にとっても大きなチャレンジだった。
 たとえばシンク開口部に、キッチンの前に立つユーザーに向かってせり出してくるR(曲線)部がある。中華鍋などの大きな調理器具でも余裕を持って洗えるスペースを確保するために設けられたものだ。ところが、その張り出し部にあるS字状の箇所(写真下)をどう加工するかが問題になった。単純なRならまだしも、S字状にカーブした部分をプレスで深く絞ることはできない。そこで写真のような部材を作り、溶接、研磨で仕上げるという方法を採った。


シンク開口部のせり出し部分。写真のようなS字状の部材を作り溶接する


部材溶接後、手作業で研磨を行い、髪の毛ほどの細長いヘアライン模様をつけていく(目出し作業)


研磨後の状態。部材を溶接したとはとても思えないような美しい仕上がりだ

「一枚物」の美しさへのこだわり――手作業が織りなすステンレスの美観

 ひとくちに「ものづくり」といっても、製品のコンセプトを作り出すことと、実際の製品を作り上げることは、必ずしも一枚岩とはいかないことがある。機能上、デザイン上の必要性からたどりついた形状が、生産部門に大きなブレークスルーを要求するものになることが少なくないのだ。
 「S.S.クラフツマンワークトップ」の場合も、ステンレス特有の美観を活かしたデザイン表現を行うために、意図的にR(半径)を小さくした設計が行われている。つまり、緩やかな丸みではなく、厳しいカーブを描くような箇所が多いのだ。下記写真に示したキッチンのコーナー部もまさしくそうであり、それゆえ汎用品のようにプレスで絞って成型することが難しい。
 ステンレス鋼は外観が美しく錆びにくいという長所を持つ一方、プレスで絞り加工を行ったあとに割れが発生しやすいなどの特性があるからだ。写真(下記左)の溶接のラインを見れば、同社の製造現場ではコーナー部分の板材をどのように折り合わせ、どんな形状のピースを作り、溶接作業を行っているかがおおまかにわかるだろう。
こうした手間のかかる作業を経て、誰が見てもステンレス板の「一枚物」としか思えないような美しい仕上がりを実現しているのが、湯本工場のクラフツマンたちだ。
 実際に製造現場を訪れ、同工場第二製造課に所属するクラフツマン・橋誠氏の仕事振りを映像・写真に収めた。橋氏は入社22年目のベテランで、1人で全工程をこなすことができる技量の持ち主。おもに溶接、仕上げ、最終検査を担当している。橋氏は、高品質の溶接作業に用いられる「TIG(ティグ)溶接」部門で、日本溶接協会が認定する手溶接技能者の最上位資格を取得しているほか、いわき市で行われたTIG溶接技能大会で優勝経験を持つ。


コーナー部もR(半径)が小さく、汎用品のように板材をプレスすることは難しい。そこで板を折り合わせ、別途ピースを作り、溶接して組み上げている


熟練した技能者が、1箇所1箇所丁寧にTIG(ティグ)溶接を行っていく


溶接後、仕上げ作業を終えたコーナー部。手作業で「一枚板」の感覚を再現していくのが同社の板金技術の真骨頂だ


内側に当て金を添えながら、ハンマーで叩き、形を整えていく


細部を整形するときには、微妙な力加減で細長いハンマーを当てる。道具も自らカスタマイズしている

日々お客様を思い、1つひとつの作業に心を込める


クリナップ湯本工場で「S.S.クラフツマンワークトップ」を手がける社歴22年の橋誠氏

 同社のクラフツマンたちは、社内の製造ラインの中でも特別な存在だ。技能伝承推進のために2002年に設立されたものづくり研修センター「登工房」(のぼるこうぼう/同いわき市)で学んだ社員の中でも、とくに技能レベルの高い人物がクラフツマンに選抜されるという。
 彼らは文字通り、クリナップにおけるトップクラスの技能者で、現在、湯本工場には30〜35歳を中心に常勤で4人のクラフツマンが「S.S.クラフツマンワークトップ」の生産に携わっている。
ちなみに「登工房」の名称はクリナップ創業者の故・井上登名誉会長の名前に由来しており、同工房では、同社技術の中核である板金加工に必要な溶接、プレスなどの匠の技を、ベテラン技能者が受講者に伝承している。
 クリナップには、商品に独自性・個性を持たせつつ、コスト面でも競争力を生み出す「20パーセントの手作りと80パーセントの機械化のミックス」という戦略がある。だが、フラッグシップモデルである「S.S.クラフツマンワーク」の製造ラインは特別で、「手作業8割、機械化2割」を貫き同社の技術や技能、ノウハウを結集したものづくりが行われている。その意味で「S.S.クラフツマンワークトップ」は名実ともに、日本で初めてシステムキッチンを開発したクリナップに脈々と受け継がれている「ものづくりのDNA」の結晶、というにふさわしい製品だ。

 「モノにこだわっている方に、良い製品を届けたいですね。(クラフツマンたちには)つねづね『君たちは、素晴らしい品物に携わっているんだぞ』と叱咤激励しながら、製品を送り出しています」と湯本工場長の高橋弘喜氏。
湯本工場ではいま月産4、50台のペースで「S.S.クラフツマンワークトップ」を生産している。同社によれば、同製品は国内高級キッチン市場で2割以上のシェアを占めるという。
「『S.S.クラフツマンワークトップ』は、私たちの技術を、お客様に体感していただける製品だと思います。お客様に満足していただける製品を、毎日1つひとつ丁寧に、気持ちを込めて作っています」という、クラフツマン・橋氏の言葉は、「家族の笑顔を創ります」という新企業理念の実現に向けて邁進する、クリナップからユーザーへのメッセージでもあるのだ。


最終検査を終えて出荷を待つ製品を、心を込めて磨き上げる

記事:加賀谷 貢樹
掲載:こだわり物語
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