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江戸散策
文 江戸散策家/高橋達郎
協力・資料提供/深川江戸資料館
第20回 江戸のお正月の風物詩、七福神めぐり。
古代浮世絵噺

『古代浮世絵噺』
宝船(壁に貼ったり、枕の下にも入れた)

 七つの幸福を授かり、七つの災いを避けるという「七福神めぐり」は、江戸時代に定着した風習である。七福神の発祥の地は、室町時代の京都と言われているが、徳川家康が狩野探幽に描かせた宝船に乗った七福神が評判になって以来、江戸を中心に急速に庶民に浸透した。宝船の絵は、いろいろな人に描かれ模写され広まった。
 お目出たいことや縁起の良いことは、もとから江戸っ子は大好きだ。それを楽しむことも心得ている。当然「七福神めぐり」は江戸庶民のレジャーとなった。
右上に続く >
 「七福神めぐり」は現在全国に数多くある。京都には「都七福神」、奈良には「大和七福神」があり、東京では「谷中七福神」や「山手七福神」「隅田川七福神」などが有名だ。
 ということで、お正月には七福神めぐりに出かけてみてはどうだろう。筆者おすすめは、江戸でもっとも古い「谷中七福神めぐり」だ。江戸時代から続いている寺院だけの由緒ある七福神を巡るコースで、江戸情緒を楽しみながら散策できる。予備知識として、七福神の簡単なプロフィールと所在地を紹介しておこう。
谷中七福神めぐり
[谷中七福神めぐり]
●弁財天(べんざいてん) ………1弁天堂/台東区上野公園2-1
 七福神のなかで唯一の女神。もともとは弁才天と書いたが、財産の神ということで弁財天と書く。音楽や芸能の神でもある。
●大黒天(だいこくてん) ………2護国院/台東区上野公園10-18
 豊作を約束する農業の神。台所の神でもあり、食べることに不自由しないよう大黒天の絵を台所に貼る風習は今でも残っている。
●毘沙門天(びしゃもんてん) …3天王寺/台東区谷中7-14-8
 甲冑に身を包んだ軍神。仏教の四天王の一人で多聞天とも呼ばれる。財宝や福徳をつかさどる神。
●寿老人(じゅろうじん) ………4長安寺/台東区谷中5-2-22
 長寿と知恵をさずけてくれる神。見た目は福禄寿に似ている。長安寺の寿老人は、家康が奉納したものと言われる。
●布袋尊(ほていそん) …………5修性院/荒川区西日暮里3-7-12
 大きな袋を持ち、いつも笑っている福徳の神。ここの布袋様は大きな木像でそのユニークさは、かなりのインパクトがある。
●恵比寿(えびす) ………………6青雲寺/荒川区西日暮里3-6-4
 釣り竿と鯛を持つ漁業、航海の神。「釣りして網せず」は、欲張らない清い心を意味することから商売繁盛の神とされる。
●福禄寿(ふくろくじゅ) ………7東覚寺/北区田端2-7-3
 福(幸福)、禄(身分)、寿(長寿)を兼ね備えた神。長い頭と白いひげ、水墨画によく登場しているから見覚えのある方も多いだろう。
ちょっと江戸知識「コラム江戸」
神様を漬け物にしちゃった福神漬。
表彰碑
表彰碑(福神漬発明者 野田清右衛門と刻されている)
 「福神漬」は江戸時代でなく、明治時代になってから考案された食べ物だ。この福神というのは、江戸「谷中の七福神」に由来している。しかし何でまた、神様を漬け物にして食べてしまうことになったのだろう。ずいぶん思い切ったネーミングである。
 もちろん招福の意味で「福神漬」を食べるのだが、こんな名前の付け方にも江戸の粋を筆者は感じてしまう。
 「酒悦」の15代、野田清右衛門が江戸末期から明治にかけて10年以上を費やして考案した漬け物が「福神漬」である。「酒悦」は江戸初期創業の老舗で、現在も営業(台東区上野2-7-11)している。
 「酒悦」が弁天様のある不忍池に近かったこと、七種類の野菜(大根、なす、なた豆、蓮根、うり、しそ、かぶ)を使用していることなどから、「福神漬」と命名された。
 「福神漬」の石碑が浄光寺(荒川区西日暮里3-4-3)にある。七福神めぐりの際には、ぜひ立ち寄ってみよう。
(協力/酒悦)
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