キッチンと暮らしのまん中で輝く人
教室ストーリー
揺るがない軸があるから、変わっていける
オンラインは“代替”ではなく“新機軸”
次の大きな転機となったのがコロナ禍。対面レッスンが難しくなり、多くの教室がオンラインレッスンを開始。向坂先生も導入を考えていたそうですが、
「私のデザインは細かな工程が多く、ライブで行ったとしても伝わりにくいため、細部までわかるようレッスン動画を撮影・編集し、YouTube限定公開で配信。花材を郵送して全国へ届けました」
結果、“これまで参加したかったけれどできなかった”という遠方の新規受講生が増加。
メールでの丁寧な対応に距離感を感じないという声も多く、その多くがリピートしています。
「お会いしたことがないのに、旧友のような関係が全国に。コロナ禍だけのつもりだったレッスン動画配信が、気付いたら仕事の柱の一つになっていました」


季節に合わせテーブルを彩る花々。変わらないデザイン軸は「ナチュラル・シック・エレガント」
プリザーブド全盛の頃も流行に迎合せず、アーティフィシャルで“生花のような自然さ”を追求してきた向坂先生。
「ある時、自分の軸は何だろうと考えました。確信したのは、暮らしを演出する花、そしてナチュラル・シック・エレガントなデザインが軸であるということ。色合わせ、フォルム、質感、そして近くで見ても生花と思えるような細部までのこだわりが、私らしさだと思っています」
1つのデザインに50種類以上の花材を使うこともあるそう。
そのため、花材の手配も一苦労。複数の資材店を巡り、納得のいく作品を仕上げるまでにはかなりの労力がかかります。
「生徒さん全員分の花材を確保して1名分ずつにセットする作業が本当に大変で、毎回アシスタントと格闘しています。新デザインのレッスン前は家中ダンボールだらけのなか生活しています(笑)。でも、“先生の色合いとデザインが好き”と言ってくださる生徒さんの声があるから頑張れます」
ブログに加え数年前に開始したInstagramで紹介している作品も評判を呼んでいます。
ちょっと意地悪な質問ですが、「デザインを真似する人が増えるのは心配ではないですか?」とお尋ねすると、
「たまにですが、生徒さん以外の投稿で、あれ?私のデザインと似ている?と思う写真を見かけることがありますが、細部まで私と同じにすることは不可能だと思っているので気にしないことにしています。真似される怖さより、自分にしか出せない特色を発信して、見ていただくことのほうが大切なので・・」
幼い頃から花や植物が大好きで、道端の花や樹々はもちろん、ありとあらゆる植物を観察、季節により変化する色やフォルムも自然と脳裏に焼き付いてしまったそう。その観察眼、揺るがないデザイン軸とその世界観から生まれる作品はまさにオンリーワン。それが多くの方に支持されている魅力だと思いました。
キッチンにもこだわり理想の空間を実現
多忙ななかでもキッチンに立つ時間を確保し、それは癒しにもなっているそうです。
「事情で数回に分けてリフォームしたのですが、最後に残していたのがキッチン。以前のキッチンの不満を書き出して一つずつ解決しました。選んだのは、クリナップのCENTRO(セントロ)。
特に、手動でプルダウンできるハンドムーブ吊戸棚やフロアコンテナなど美しく大容量を収納できる点、自動洗浄機付きの洗エールレンジフードなど使い勝手と技術に惚れ込みましたアドバイザーさんが親身に対応してくれ、限られた空間でも理想通りにでき、とても満足しています」



こだわりのつまったキッチン。利便性と美しさの両立が叶いました
使いやすいキッチンで、料理は得意を越えて“暮らしの愉しみ”に。番組仕事で覚えた簡単でおいしいレシピは今も宝物。料理教室やSNSで出会ったレシピを再現するのもリフレッシュタイムになっているそうです。
これから——やり切った先の新しい景色へ
花と空間をつなぐプロダクトとして、2018年から西陣テーブルファブリックのプロデュースも開始。
「ドイツに住み、外から日本を見ることで発見できた日本の伝統美を暮らしに取り入れたいと思うようになりました。でも、現代の暮らし、和洋折衷の花やインテリアに馴染む色柄の生地を探したのですが、納得のいくものが見つからず、いっそ自分で作ろう!と思ったところにご縁をいただきました。撥水・リバーシブル・洗えるなど機能も重視したところ、初回から反響が大きく、年末には新宿伊勢丹で販売いただくことに。その後、季節ごとに新しい色柄をプロデュースしてきました」
最近は韓国での販売も始まり、米欧からの引き合いや在日外国人からのオーダーも。京都で1200年の歴史を紡いだ西陣織の美を、現代の暮らしへと橋渡ししています。






Rumi’s Styleの西陣織テーブルファブリックを通じて日本の美を世界へ
25年のレッスンと3冊の著書。やり切った実感と感謝を胸に、主軸は変えずに視野と活躍の場を広げていく向坂先生。
「花とインテリアは私の中の主役に変わりはありませんが、西陣織テーブルファブリックは始めて7年、まだまだやりたいことがたくさん。季節ごとの色——白・桃・緑・青・紫…に続き、他の色も既にラインナップしています。日本の伝統美をもっと世界の方に知ってもらいたいですね。韓国に続いて米欧・アジアなど海外への展開も夢で終わらないよう、少しずつ形にしていきたいです」
『神は細部に宿る』を体現した花とインテリアの世界感は、人と人の距離を縮め、多くの人の暮らしに“物語”を与えてくれています。教室を越えて広がった輪が、これからも一歩一歩世界へ広がっていくのが楽しみです。
(おわり)
インタビュー・文:窪田みゆき
写真:原田圭介
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