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SUSTAINABILITY

CSR活動への取り組み

Message

家族の“これから”に寄り沿う
ESG/SDGs視点の経営

長期的なスパンで企業価値を高めながら人と暮らしの未来を切り拓いてまいります

2023年度を振り返って

クリナップグループは、長期ビジョン「クリナップサステナブルビジョン2030(CSV30)」のもと、システムキッチンのパイオニアとして「人と暮らしの未来を拓く」を目指して事業活動を展開しています。
CSV30を戦略的に進めるために、2023年度に最終年を迎えた2021中期経営計画を「ESG/SDGs視点での経営基盤の強化フェーズ」、2024中期経営計画以降を、「成長を支える経営基盤の強化フェーズ」と位置づけ、全社一体となって企業価値の向上を成し遂げていかねばならないと考えています。

2021中期経営計画は、財務目標に対する課題が残る結果であった一方、非財務に関する目標、つまり基本戦略のひとつとして推し進めてきたESG/SDGs視点での経営基盤の強化については十分な成果を上げることができ、評価に値すると考えています。

企業として利益を追求するのは当然ですが、財務と両輪でESG/SDGsにかかわる取り組みも推進しなければ、長期的な利益獲得や企業価値向上は見込めません。そのような意味で、当社グループとして初めてESG/SDGs視点を取り込んだ2021中期経営計画は意義あるものでした。

代表取締役 社長執行役員 竹内 宏

この2021中期経営計画の成果として挙げたいのは、2030年度温室効果ガス排出量削減目標におけるSBT認定の取得、そして「キッチンから心豊かな未来を創る」をコンセプトに本格始動した「未来キッチンプロジェクト」です。
このプロジェクトは人口減少、高齢社会といった社会課題に向き合い、食と暮らしで自分らしく生きるためのキッチンの在り方を模索していくという未来を見据えた産学共同研究で、当社グループとしてはチャレンジングな取り組みです。
2023年度には、未来を担う子ども達とともにこれからのキッチンについて考える「未来キッチン イラストコンテスト」の開催、災害時の使用も想定し循環ろ過装置を備えた「モビリティキッチン」のプロトタイプを発表することができました。
こうした取り組みは、すぐに利益を生み出せるような試みではないため、経営全体のバランスを保ちながら、どの程度注力すべきなのか、社内で多角的な視点による検討を行ってきました。私自身、本プロジェクトが当社の長期的な企業価値向上につながる重要な取り組みであるという信念を持って進めていたものの、株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまからの評価に一抹の不安もありました。
実際には、本プロジェクトをリリースした折に想定以上の大きな反響をいただき、この想いは確固たるものとなりました。

2024中期経営計画の策定と重要課題の見直し

CSV30の実現に向けて動き出した2021中期経営計画においては、経営基盤のなかにESG/SDGs視点という種をまき、芽を出すことができました。2024年4月からスタートした新たな「2024中期経営計画」では、その芽をさらに成長させていかねばなりません。
2024中期経営計画の主な重点施策、およびそれらを実現するためのサステナビリティの重要課題は、当社グループの成長のために何をなすべきかを考慮して、策定・見直しを行っています。太陽光発電設備の導入をはじめとする環境対策はもちろんのこと、当社事業の成長を担う人材投資やサプライチェーンへの対応を幅広く実行していく予定です。

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を新たな重要課題として加えたのも、ダイバーシティ経営へのシフトが当社の成長、ひいては企業価値に大きく影響するためです。
昨今注目されている女性活躍に限らず、当社グループの若手社員・熟練社員・外国籍社員・障がいがある社員などが、個人の状況に合せて、誰もが意見を伝え、活躍する機会が均等になるということを目指します。これはクリナップグループとして成長し続けるために、今取り掛からなければならない重要な課題です。この実行部隊として、2024年に人事部内にDE&I推進プロジェクトを設置しました。このプロジェクトは、血が通った社内コミュニケーションを通じて、イノベーションが創出される活力ある組織をつくるという壮大なミッションのもと活動をスタートしており、グループ全体で推し進めていきます。

サプライチェーンとの対話

当社グループが安定したサプライチェーンを維持していくために、また、長期的な視点で課題を捉えていく上でも、人材に重きを置く必要があります。私自身、営業からの叩き上げということもあり、現場での対話を大切にしており、数年前に当社グループの製品をお客さま宅に取り付ける作業を委託している業者様に集まっていただき、対話の場を設けました。直接お話をして、取付・設置を行う人材の高齢化、重量のある製品を取り扱うときにかかる身体への負担、さらには作業に見合った委託先への賃金面での問題に業者様が頭を悩ませている状況を目の当たりにし、危機感を抱きました。
この状態を改善せねば、当社の事業活動で欠かせない作業を請け負ってくださる業者が減ってしまい、当社の経営にも影響が及ぶことは明白でした。課題解決のために、私たちが着手した施策は主にふたつ。ひとつは製品の軽量化による作業負担の軽減、そしてもうひとつが、委託先が作業に見合った収益を得られるような収益構造の改善です。いずれも企業の一担当者だけで解決できるような問題ではありません。

ひとつめの施策は、「サニタリー元年」と銘打ち2024年2月に“「水まわり」はもっと自由にリビングに近づくべき。”というコンセプトでリリースした「SELEVIA」「rakuvia」です。

この商品は優れた保温性による省エネ効果、膝や腰への負担を軽減できるハイポジション設計が特徴的ですが、実はそれだけではなく、パネルを軽量化かつ組み立て時間短縮が可能となる構造へ改良しました。これは取付・設置業者様との対話から生まれたアイデアで、作業時の負担低減に貢献できるものと自負しております。

ふたつめの施策については、製品・サービスに見合った料金をユーザー様からいただき、それをきちんと取付・設置業者様にもお支払いしていく仕組みの確立に向けて動き出しています。
自社だけではとても実現できない難題ですが、対話をした以上、きちんとそれに応えていく姿勢を示していかねば信頼を失いかねません。関係会社、そしてキッチンバス業界に対しても投げかけを行い、業界全体で改善に努めていきたいと思います。

対話は問題解決の糸口

近年、環境や人権に関する課題について、企業に対する要求が一層高まっています。そうした動きは欧州中心に活発化しているため、日本人には耳慣れない横文字の言葉が飛び交っています。カーボンニュートラル、人権デューデリジェンス、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンなどがその代表例です。それぞれ重要なテーマにもかかわらず、言葉の印象が先立つからか、社内でサステナビリティの取り組みを担う社員には難しい概念として捉えられがちで、自分たちの事業活動と結びつけて考えにくい状況になっていると感じています。

私は社員に“ 対話”と“ 変えられる勇気”が大切だと常日頃から伝えています。特に人権などの人に関連する課題は、先述の取付・設置業者様との対話のように本質に立ち返ると決して難しい概念ではなく、まさに“ 対話”と“変えられる勇気”が解決の糸口になるのではないかと考えています。対話だけで終わらせず、相手の声をきちんと受け止めて、声をあげてくれた人たちの期待に応えていくことが何にも増して重要です。人権デューデリジェンスで求められている本質的な部分は、まさしくそういうところだと思います。

そういったマインドが社員一人ひとりに根づくことで、結果的に社会や環境に関する課題を真に解決していけると信じています。

これまでにない前例を作りながら挑戦していける会社を目指して

社員からは「前例がないからできません」という声を聴くこともありますが、前例がなければつくればいいだけの話です。チャレンジしてみなければ何も始まりません。対話と変えられる勇気を大切に、個としても組織としても何事にも臆せずにスピード感を持って挑戦していける会社を目指し、サプライヤーの皆さまにも、クリナップグループは“対話”と“変えられる勇気”がある会社であることを知っていただきたいと思っています。

人と暮らしの未来を拓く――。
CSV30でも掲げるこの大目標の達成に向かって邁進することこそ、当社グループの大きな存在意義だと思いますし、それをしっかりと実践していきます。また、クリナップグループがそういう企業だということを、社外のステークホルダーの皆さまにきちんと知っていただく努力も惜しまないつもりです。そして、一緒になって持続可能な社会の実現を目指してまいります。


クリナップ
 サステナブルビジョン 2030(CSV30)

「人と暮らしの未来を拓く」

私たちクリナップは、システムキッチンのパイオニアとして、新たな食住空間の可能性を広げ、創造し、
世界中のすべての家族から選ばれ続ける企業となります。

重点指針
  1. キッチンメーカーとして新たな事業領域に挑戦し、安定した収益基盤をつくれている
  2. 顧客接点の多様化、デジタル化に対応し、より身近で選ばれ続ける存在になっている
  3. 人財を活性化し、能力を最大限発揮できる職場づくりを実現できている
  4. 持続可能な社会の実現に貢献できる会社になっている

2024中期経営計画の基本方針

「ファン化促進」「専業力強化」を進め、企業価値の向上を目指します

  1. 戦略1 「ファン化促進」による成長拡大、収益力の向上

    1. 住空間への提供価値をキッチンからサニタリーへ展開、新たな価値の提供
    2. 海外・オーダー系・サービス・子会社のビジネス拡大、新たな顧客の創造
    3. 製商品・サービス・業務品質の向上、CPSを核とした原価低減の継続
  2. 戦略2 「専業力強化」による経営基盤の次世代化

    1. 需要構造の変化に合わせた営業バックヤード体制、生産体制の整備
    2. 安定した供給能力を維持できるサプライチェーン体制の構築
    3. サステナビリティ推進体制のもとでSDGsに向けた重点取組を推進
    4. 新たな人事制度の確立、社員エンゲージメントの向上策を推進
  3. 戦略3 資本収益性の重視と利益還元の拡充

    1. 財務健全性の維持、重点施策への成長投資、株主還元の強化