キッチンと暮らしのまん中で輝く人
教室ストーリー
番組制作の構成力が教室運営に活きた25年
教室開始のきっかけ、“自分ならでは”の付加価値の大切さ
2012年2月に「予約の取れない自宅教室」コーナーにご登場いただいた向坂先生。
その後、コロナ禍も経て教室や活動の幅はさらに進化しました。
今回、改めてこれまでの歩みを振り返っていただきました。
「教室を始めてもう25年になります。元々花が大好きで、NHK BSの英語ニュース番組でディレクターを務める傍ら生花のアレンジメントを学んでいました。結婚後、夫の転勤で暮らしたドイツでも花のスクールに入りたかったのですが、マイスター制度では、生花店での経験が問われ断念。それでも週に1回ドイツの花デザインを教えてくれる教室を見つけ通いました。
帰国後、テレビ・ラジオのディレクターの仕事を再開し多忙な日々でしたが、2000年、友人3人に頼まれ材料費のみでレッスンをしたことが教室の始まりです。
再度リクエストをもらい開催したクリスマスリースのレッスンには15人以上が参加。皆さんに喜んでほしくて、ドイツで購入した飾りを使い空間演出にもこだわったところそれが大好評で。毎年クリスマスごとに倍、倍と人数が増えていきました」
振り返るとその体験は貴重な気づきになったそう。
特にクリスマス・正月・母の日など季節行事は集客の好機。“自分ならでは”の付加価値(空間演出、ティータイムの一工夫など)を加えると満足度と口コミが伸びることを、学んでいったそうです。

「当初は、テレビの仕事をメインにしつつ、たまに生花のレッスンをしていました。そんな時、人気番組『マーサ・スチュワート・リビング』の枠内で、日本向け料理&クラフト番組を担当させてもらい、料理と暮らしに益々興味が深まりましたね。」
自分が伝えたいのは暮らしを彩る花だということを再確認し、番組制作で鍛えた“見せ方・伝え方”の構成力をレッスン設計にも活かし、レッスンも増やしていったそうです。
ですが、やがて両立は難しくなり、『10年後・20年後も続けられる仕事か』を自問し、仕事を辞めて花の道へ。とはいえ、趣味だったことを胸を張って仕事と言えるまでに10年以上を要したそうです。
転機になった出会いと、出版とアメブロで広がった世界
大きな転機になったのが、アーティフィシャルフラワーとの出会い。当初は造花に抵抗がありましたが、生徒さんのリクエストに応え資材店を訪れたところ、品質の高さに驚き、「いかに生花のように見せるか」の工夫を開始。その後、アーティフィシャルを希望される生徒さんが増えていき、専門教室への転換を決断されました。
「私の考えだけだったら決断できなかったかもしれません。アンケートを採ったり生徒さんの声に耳を傾けることで、自分の思い込みを外し、教室の新領域や自分の強みが見えてきました」
そして、生花のように自然で美しいデザインの研究に何度も徹夜するほど心血を注いだ向坂先生。それはアーティフィシャルフラワーに命を吹き込むことでもありました。
『神は細部に宿る』を座右の銘に、そのこだわりが生んだ独自の世界観は評判を呼び、さらに生徒さんが増加。


ナチュラルでシックな色遣いのエレガントなアレンジが、「Rumi’s Style」
次なる転機になったのが、初著『向坂留美子のサロネーゼ入門』の出版と、その販促のために開始したアメブロ。ここでも番組制作で培った構成力を活かし、読者を惹きつける投稿で反響が広がりました。
「テーマを『花・インテリア・ヨーロッパ』に絞り、時折、プライベートなことも織り交ぜ書いていたのですが、それが人となりを伝え、「信頼」「安心感」を生み、本の販促のはずが生徒数も増やすことになり、びっくりしました。その後、ブログを通じて関西や北陸からもセミナーの依頼をいただき、各地で講座を開催。集客の不安もありましたが、行動して初めて広がる世界があると実感しました」
チャンスを支えるのは、経験と努力
世界らん展や百貨店でのイベントなど、企業案件も同時に増加。動画配信レッスンへの切替えもスムーズに行えたのは、テレビ時代に必死に取り組んだ番組制作の経験があったからこそ。
「企業案件も、いつも裏方視点で参加者様にも企業様にも喜んでいただけるよう構成を考えました。
このときに思ったのが、人生どんな経験も役に立つということです。
教室運営では悩みや大変なこともたくさんありますが、そのときは全然前進していないように思えても、振り返れば螺旋階段を一歩一歩上ってきたと気づきます。どんなときもどんなことも一生懸命取り組めば、道は開けていくと思います」



SNSで発信する、暮らしを彩る季節のアレンジとインテリアも大人気
満席が続く教室の道のりは一見すると順風満帆に見えますが、それは一つ一つのデザインにもレッスンにも生徒さんにも常に丁寧に、そして全力で向き合い、経験を糧に積み上げてきた“螺旋階段を登るような努力の結晶”でした。
次回は、コロナ禍で確立した動画レッスン、大切なデザイン軸、西陣織テーブルファブリックのプロデュースなど、“今”と“これから”をうかがったインタビュー後半をお届けします。どうぞお楽しみに!
インタビュー・文:窪田みゆき
写真:原田圭介
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