シンクと排水口のステンレス一体成形。この成形技術は、システムキッチンS.S.のために開発され今日まで様々なシンクに採用されています。
コンピュータによる成形シミュレーションでは不可能という結果が出た、無謀ともいえる挑戦へとかき立てたのは、キッチン専門メーカーの誇り。キッチンがもたらす快適・便利の世界を広げる挑戦でもありました。
そんな「とってもクリン排水口」について当時の工場での生産担当者の声とともに振り返ります。
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検証に次ぐ検証を繰り返しが不可能の壁を破る
「金属プレス製品には『時効割れ』という言葉があります。見た目は思い通りに仕上がったようでも、たとえばお湯をかけるとか、何らかのきっかけで割れてしまうということがあるのです。これは残留応力のしわざで、簡単にいえば、無理に成形したことで、材料が元に戻ろうとする力が残っているために起きるものです。お客さまの元へお届けする以上、そんな不安は絶対に取り除かなければなりません。ですから、あらゆる角度からの検証を、とことん行いました」
『次世代シンク』という開発ネームが付けられたそのシンクが目指したのは、「シンクと排水口を、ステンレスの１枚板から一体成形する」という、業界でも未知の領域でした。完成して商品化されてから年月が経ち、生産技術課の佐藤正彦は、現在では開発当時のことを知る唯一のスタッフとなりましたが、その後も豊富な知識と経験を活かしながら、ステンレスに関わる技術検証を続けています。
「私が生産技術課に配属されたのは最初の仮金型ができあがった頃で、そこからさらに発売までは1年という月日が必要でした。実際にステンレス板をプレスして安定した品質を生み出せるかという、たび重なる検証が繰り返されたからです。なにしろ、コンピュータによるシミュレーションでは、このシンクの成形は、どうやってもおそらく不可能だと結論されたほど、ステンレス加工の常識ではあり得ないかたちだったからです」
未来の便利・快適のために！あえて未知の技術へ挑む
そんな「あり得ないかたち」を実現した【とってもクリン排水口】ですが、そんな苦労をしてまで、一枚板プレスによる製造の実現にチャレンジしたのはなぜか？ 「溶接」という簡単にできる手法もあったのではないか、という疑問が頭をよぎります。
「確かに溶接でも可能ですし、機能的には同じでしょう。しかし、やはり意匠的にもこだわりたかったのと、何より我々の持つ技術をより発展させ、それをまた未来につなげるためでもありました。キッチン専門メーカーのクリナップにしかできない、クリナップだからこそ業界に先駆けてやらねば、というスタッフ一同の強い思いがありました。しかも当時は、計算上は不可能だといわれると、逆に燃えてしまうようなベテラン技術者も多くいらっしゃいましたから（笑）」
さらなる難題「流レールシンク」の片寄構造
2015年に発売された流レ―ルシンクにも「とってもクリン排水口」は搭載されています。
初代とってもクリン排水口の「美・サイレントシンク」に対して全く違ったのは排水口の位置が中心ではなく片側によっていることと、三角形になっていることです。
「最初に図面を見たときは面食らいました。さすがに難易度が高すぎるだろうと。しかし開発者担当者の想いを聞いて、これは形にしないといけないと考えました。」
もちろんシミュレーションでは成型不可能。薄く延ばされたステンレスは厚みが0以下、つまり消滅するという結果が突き付けられました。しかし、過去のノウハウを活かし、このように変更すれば成型できるのでは？といった予測のもとに形状を変更してきました。
「形状変更は流レールの性能担保と成型性の戦いでした。形状をすこし変更するたびに流れ方の検証を行い、まさに少しづつ積み上げていきました。」
苦労の甲斐あって、流レ―ルシンクはクリナップを代表するシンクになりました。2023年、6月には一体成型でありながらシャープなデザインの「流レ―ルスクエアシンク」も登場。シンク成型の集大成ともいえる一品です。
「ご購入いただいたお客さまには、本当に感謝いたします。継ぎ目がないことに加え、汚れがたまりにくい形状、親水性の美コートなど、とってもクリン排水口を搭載したクリナップのシンクは、ステンレスシンクの清掃性を極めたアイテムです。ぜひ、永く快適に、楽しくお使いください！」
