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天然木ワークトップの開発秘話 development
7min
天然木ワークトップの開発秘話

2025年9月、システムキッチンSTEDIAに天然木ワークトップがデビューしました。対面キッチンが主流となった現在、キッチンには設備機器としての性能以外に居住空間の一部としてのインテリア性も強く求められています。そんな生活者の要求に応えるアイデアのひとつが天然木ワークトップで、当社が新たなワークトップ素材「木」に着目して研究してきた成果が注入されています。キッチン作業での使用に耐えるクオリティをいかに高められるか。さらには家族が集まる場であるダイニングテーブルへの展開はどうあるべきか。開発リーダーから、開発の経緯や思いを聞きました。

目次

木へのこだわり、クリナップのルーツ

「元々クリナップは、家族が揃って食事を楽しむ座卓の製造販売から始まった会社で、当時、優秀な木工職人によって支えられてきました。そしてキッチンに主力商品が移行してからも、卓越した木工技術を活かしたキッチン扉が人気を博した歴史があります。今回の挑戦は、そんな歴史があってのものですし、自分自身、木という素材が特に好きだということも大きな要素ではありました」
しかしそこには、常に水や油、調味料、さまざまな衝撃にさらされるキッチン空間に耐えるクオリティを満たすには、という大きな壁。いつか実現できたら……と考えていたところに現れたのが、木質内装建材メーカーの朝日ウッドテックさまが新たに打ち出した内装建材ブランド「WOODRIUM」でした。

朝日ウッドテックさまとの出会い

日本の製造業を発展させる一翼を担ってきた「NPS研究会」へクリナップが入会する際に、紹介の労をとっていただいたのが朝日ウッドテックさま。会社としてはそれ以来、40年以上の長いお付き合いです。
「2018年に発売したSTEDIAのカタログ撮影のため、扉カラー『ルサックヘリンボーン』に合わせる床材を探していたときに、朝日ウッドテックさまのフローリングに目を奪われました。素材の良さもさることながら、通常なら120mmなどピッチを統一して組まれるところ、サイズの異なる幅の木材をランダムに混合した珍しいデザイン。そんな新しいことに挑戦する姿勢に当時から好感を持っていました。
その4年後となる2022年、朝日ウッドテックさまは70周年フェアのデモンストレーションで、新たな内装材「WOODRIUM」を使ってシンクまで木でつくられたキッチンを展示。お互いにやりたいことの方向性が一致していることを感じて共同開発が決まりました。

自然素材をキッチンに取り入れる挑戦

すでに高いクオリティを生み出していた「WOODRIUM」ですが、厳しい環境で使われるワークトップに採用するにはまだまだ改良が必要で、そこはクリナップが培ってきた技術や知見も交えながらつくりあげていったといいます。

挽き板(ひきいた)を用いて衝撃や湿気に強く

無垢材は湿気で反る心配があります。家具でよく使われる厚みのない突板ではキズが入ったときに芯材が露出するリスクや、ワークトップとして使用するための強度面に不安がありました。そこで天然木ワークトップには厚みのある挽き板を用いて、構造として湿気への強さを確保しています。間には植林木を挟むことで軽量化しながら、耐衝撃性、耐久性を高めています。

「実は挽き板を安定してつくれる会社は日本に数社しかなく、朝日ウッドテックさまはそのうちの一社なのです」
挽き板は乱尺張りとなっていて、自然な木の風合いを感じながら、職人が色柄のバランスを見て配置した個性的な表情を楽しめます。

水の浸入を防ぐ表面5層・木口7層の塗装

もちろんそのまま使えば当然水に弱いので、塗装にも工夫を重ねました。水の浸透を防ぎ、キズを回避するために工夫されたのが、5層のウレタン塗装です。

「厚みがあって強度が高い挽き板に対して、さらに凹みキズが付きにくいよう下塗りとして塗膜を2層重ね、柔軟性の高いウレタン塗装を2層重ねて塗膜を割れにくくしています。そしてキズが付きにくい上塗りを1層。これは清潔さを高める抗ウイルス・抗菌塗装となっています。さらに表面の5層は小口面まで回り込み、裏面に施された2層と重なり7層に。特に水が侵入しやすい箇所をしっかりガードしています」

アンダーシンクへのこだわり

クリナップのシンクは、ほぼすべてアンダーシンクの構造。木口からの浸水をガードするためならオーバーシンクの方が簡単ではありました「シンクを上からかぶせるオーバーシンク構造なら木口を隠せてしまうのですが、それだとシンクの縁とワークトップの縁がスマートにつながるSTEDIAの良さが犠牲になってしまいます。天然木という特殊な素材だから仕方がない、ということではなく、クリナップキッチンの良さをちゃんと感じてもらったうえで天然木ワークトップの良さを伝えたいという思いが強かったのです」

愛着を持たれるデザインと手触り

見えるところは自然な木に見えるように、表面はもちろん木口の表情にもこだわっているのだそう。木口に埋められた無垢材ピースは、前縁は木目の目に合わせたピースを、側面には断面が見えるようにピースを配置することで、まるで1枚の木の板が存在するように並べられています。
「前縁部分はなだらかなハマグリ形状(R形状)にしました。これは挽き板や無垢材を使用していることから出来ることで、家具店の展示会で見てワークトップにも取り入れたいと温めていたアイデアです。“思わず触りたくなる”、そんな愛着を持たれるデザインと手触りを追求しました」

木目の色柄のバランスの美しさには朝日ウッドテックさまの技術が光りますが、フローリングとキッチンではサイズ感や見え方が異なるため、節の大きさ基準などさまざまな要素を、ワークトップに向けて最適化したものだそう。
「そのうえで申し上げたいのは、節、色味、木目のばらつき、これらはすべて天然木こそが持つ“キャラクター”で、ほかにはない魅力です。そして年月によって変化する色合い、もしかしたら使い込むうちに付いた小さなキズさえも愛着の要素となるかもしれません」

着色へのこだわり

使われている樹種は、ナチュラルなテイストに合うオークと、重厚感のあるウォールナット。オークに着色を施したオークグレーもあり、3つのバリエーションとなっています。
「オークグレーは、“神代オーク(ボグオーク)”をモチーフにしたカラーです。神代オークとは、樹木が何らかの理由で地中に埋もれ、長い年月の間に熱や圧力により炭化したもので、希少性があり高級材として珍重されてきたものです」
木には導管と呼ばれる水を通すための部分があり、着色剤を吸い込むと木目が導管部分だけ濃くなりすぎ、古風な印象になってしまいます。そのため朝日ウッドテックさまで検証を続ける一方で、開発担当者自身でも試し塗りを繰り返して神代オークらしい表情を探ったりしたそうです。  

キッチンと団らんをつなぐ

STEDIAのリニューアルコンセプトを考えるときに「キッチンを、食事を作るだけの場所ではなく、人が集まる場所として居心地のよい空間にしたい」という思いがあったといいます。
冒頭でも述べたように、元々クリナップは座卓の製造販売で家族の団らんの場に提供してきた企業。その技術や思いを現代に復興させたい。そんな思いも重なり合い、キッチンからつながる同素材のダイニングテーブル「天然木ライフテーブル」というアイデアが生まれました。

デザインのこだわり

まずひとつは、キッチンと並んだ時の統一感。
「強度保持の問題で天板の厚みが5mmワークトップよりも厚くなっていますが、天板のR形状の角度を調整するなどして、並んだときに揃った厚みに見えるようにしています。その下の幕板は、厚みが出ると野暮ったくなるため、存在感を抑えるぎりぎりの寸法を検討しました。脚の部分には金具を入れて強度を得ることで最小限の高さ寸法にし、機能的には椅子の肘掛けと干渉しにくい寸法に配慮しました」

床の方に向かって少し細く変化をつけることでシンプルながら家具らしいやさしいイメージを演出したという脚の形状は、幕板とつながる部分ではきれいなRを描いています。これは脚には無垢材を使っており、そこからの削り出しだからこそできる形状だといいます。

「大学時代の授業で、各辺に0.5Rとか2Rとかの表記に従ってサンドペーパーで削った無垢の木のスケールをつくりました。これは図面上の数字に囚われすぎず、指が触れたときどう感じるか、感覚的な寸法決めの意識を高めるための課題だったのですが、今回もそれをいじりながら、居心地の良い空間、触りたくなる角度、デザインを検討しました」
美しさもさることながら、JISのオフィス家具の基準もクリアした、しっかりしたつくりの本格的なダイニングテーブルとなっています。

キッチンメーカーとしてのこだわり

キッチンメーカーとしてリリースするのだから、雰囲気がいいだけの天然木テーブルではなく性能を重視したい……。だから「天然木ライフテーブル」は、キッチンワークトップと同じ素材と表面仕上げ。
「開発スタッフの中には小さい子どもがいるメンバーも多く、みんなで一緒に集まってテーブルでお菓子をつくるなど、テーブルで調理作業をするというシチュエーションが身近にあることで、自然とワークトップと同じ性能なら気兼ねなく使えて安心だよね、という意識が統一しました」
天然木ライフテーブルの塗装は、上塗りにアルコールにも強い塗装。毎日清潔に使えるよう、ワークトップと同じ塗装が施されています。

美しく強い、唯一無二の工芸品

天然木の良さを活かしながら強さと清潔さを高めた、「天然木ワークトップ」と「天然木ライフテーブル」。ひとつひとつが唯一無二の工芸品といえる自然素材ならではの豊かな個性が、きっと愛着を高めてくれるはずです。全国のクリナップショールームで、その手触りもお確かめいただけますので、ぜひ一度ご来場ください。

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